なぜ、絹は洗えなかったのか
絹はタンパク質の繊維だ。水と摩擦に弱く、洗濯機で洗うと縮み、白っぽく毛羽立ってしまう。だから何百年も、絹は「手洗い」か「ドライ」が常識だった。美しいけれど、気軽ではない素材。
「特別な日のための絹を、毎日の素肌のために」。開発はその一言から始まった。けれど、絹の繊維一本一本を守りながら、家庭の洗濯機の水流に耐えさせるのは、簡単ではなかった。
三百二十七回の失敗
繊維の表面を加工して水との摩擦を抑える。その配合と条件を、チームは少しずつ変えながら試し続けた。縮む。ごわつく。風合いが死ぬ。絹本来のとろみが消えてしまっては意味がない。失敗作は三百二十七枚を数えた。
「あきらめかけた朝に、洗い上がった一枚を触って、声が出た」と当時の担当者は振り返る。縮まず、毛羽立たず、それでいて絹のなめらかさがそのまま残っていた。三百二十八回目だった。
特別を、日常に
完成したウォッシャブルシルクは、吸放湿性も保温性も、絹本来の魅力を保ったまま、家庭の「おしゃれ着コース」で洗える。スリップやランジェリーとして、毎日気兼ねなく使える素材になった。
技術は、声高に語らない。製品が静かに証明する。引き出しを開けて、ためらわずに手が伸びる一枚——それが、十年の答えだ。
「あきらめかけた朝に、洗い上がった一枚を触って、声が出ました」
— Parfun Journal / 編集部