海から、選別場まで
バンコクの南、サムットサーコーンの港を朝五時に出る小さな船がある。船長のウィチャイさんは二十年、漁師だった。「魚が獲れなくなった理由のひとつは、これだよ」。網からあふれたのは、魚ではなくペットボトルとレジ袋だった。いまは週に三日、海のごみを回収する仕事に出ている。
回収されたごみは選別場で素材ごとに分けられる。私たちが買い取るのは、飲料用のPETボトルだけ。キャップもラベルも外し、透明なものと色つきを分ける。ここまではすべて人の手だ。「機械は、海の塩と砂に弱いからね」。
砕いて、溶かして、糸にする
選別されたボトルは洗浄され、米粒ほどのフレークに砕かれる。それを高温で溶かし、シャワーヘッドのような口金から細く押し出すと、冷えながら一本の繊維になる。太さは髪の毛のおよそ半分。これがウミペットの正体だ。
「最初の頃は、糸が途中で切れてばかりだった」と再生工場の技師は言う。海のごみは由来も劣化具合もばらばらで、品質が安定しない。三年かけて洗浄と溶融の条件を整え、いまは新品のポリエステルに引けを取らない強さの糸が安定して採れる。
糸から、肌のいちばん近くへ
糸は編立担当のソムチャイさんのもとへ届く。彼女の手で、糸は伸縮性のある生地に編まれ、スポーツブラやレギンスへと縫い上げられていく。「海を漂っていたとは、誰も思わないでしょう」と、できあがった一枚を光にかざして笑った。
パルファンはブランドではない。私たちの名前は、店頭の商品には載らない。それでも、海から始まったこの糸が、誰かの動く毎日をいちばん近くで支えていると思うと、2,400kmの旅にも意味がある。次に拾うのは、あなたが手放した一本かもしれない。
「海を漂っていたとは、誰も思わないでしょう」——ソムチャイさんは、できあがった一枚を光にかざして笑った。
— Parfun Journal / 編集部