言葉より先に、針が通じた
大阪からラマ2工場へ。図面は送れても、細かなニュアンスは現地で直接伝えるしかない。けれど私のタイ語は挨拶程度、相手の日本語もほとんどない。最初の朝は、正直、途方に暮れた。
転機は、一枚のサンプルだった。縫い目のわずかなゆがみを指差すと、ベテランの職人さんがすぐに頷いた。言葉はいらなかった。彼女はミシンに向かい、直したものを差し出してくれた。完璧だった。
コップンカー
思わず口から出たのは、覚えたばかりの「コップンカー(ありがとう)」だった。工場に小さな笑いが起きた。発音が、よほど危なかったのだろう。その日から、私のまわりの空気が少しほどけた。
縫い目を見せ合えば、国境はない。ものづくりには共通語がある。三年目にして、それを身体で知った出張だった。
帰りの飛行機で、タイ語の単語帳をひらいた。次に来るときは、もう少し話せるように。
縫い目を見せ合えば、国境はない。ものづくりには、共通語がある。
— Parfun Journal / 編集部